本の情報に疲れたら:あなたに本当に必要な「読むべき本」を見つけるための絞り込み方
溢れる本の情報に疲れていませんか
インターネットを開けば、SNSを見れば、様々な人が「おすすめの本」を紹介しています。書店に立ち寄れば、新刊コーナーには魅力的な書籍が山積みにされ、平積みされた本が誘ってきます。多種多様な情報に触れることは、私たちの世界を広げる素晴らしい機会です。しかし、あまりにも多くの選択肢に囲まれていると、私たちは立ち止まってしまうことがあります。
「どれを読めばいいのだろう」 「これは本当に自分に必要な本だろうか」 「せっかく時間をかけて読んでも、得るものがなかったらどうしよう」
そう考えているうちに、何も選べず時間だけが過ぎてしまったり、話題だからと買った本が積まれたままになったり。このような状況は、情報過多による「決断疲れ」の一つの現れと言えます。本当に自分にとって価値ある一冊を見つけることが、かえって難しくなっているのです。
「選ぶ」から「絞り込む」へ:本選びの新しい視点
決断疲れを軽減し、読書を通じて自己成長や充足感を得るためには、考え方を変える必要があります。無限にある選択肢の中から「最高のひとつを選ぶ」という完璧主義を手放し、「今の自分にとって、必要と思われるものをいくつか候補から絞り込む」というアプローチを取り入れるのです。
この「絞り込む」プロセスを意識することで、情報に振り回されることなく、主体的に本を選ぶことができるようになります。ここからは、具体的な絞り込みのステップをご紹介します。
ステップ1:読む「目的」を明確にする
まず、あなたがなぜ本を読みたいのか、その「目的」を問い直してみてください。漠然と「何か読まなきゃ」と感じている場合でも、心の奥底には何かしらの動機があるはずです。
- 新しい知識やスキルを身につけたいのか(仕事、資格、趣味など)
- 特定の課題や悩みを解決するヒントが欲しいのか
- 純粋に物語を楽しんでリフレッシュしたいのか
- 教養を深めたいのか
- 視野を広げたいのか
目的が明確になれば、「今、自分が何を求めているか」が見えてきます。これにより、候補となる本のジャンルやテーマが自然と絞られてきます。例えば、「仕事の効率を上げたい」のであればビジネス書の中のタスク管理やコミュニケーションに関する本が、「最近疲れているから癒やされたい」のであれば、心温まるエッセイや好きな作家の小説などが候補になるでしょう。
ステップ2:信頼できる「情報源」を厳選する
次に、本の情報を得る「情報源」を見直しましょう。SNSのタイムラインに流れてくる無数の情報や、書店で目に付いた本を片っ端からチェックするのは効率的ではありません。自分にとって信頼でき、かつ自分の関心に合う情報を提供してくれる源を意識的に選び、そこにアクセスする習慣をつけましょう。
例えば、
- あなたが尊敬する人物や、関心のある分野の専門家が推薦する本
- 特定のジャンルやテーマに特化した書評サイトやブログ(信頼できる運営者のもの)
- 好みの傾向を把握してくれている友人や家族
- 特定の出版社やレーベルが刊行する書籍リスト
- 行きつけの書店の店員さんが作成したPOPやおすすめリスト
これらの情報源から得られる情報は、あなたの目的や好みに合致する可能性が高く、無数の情報に埋もれるリスクを減らせます。情報源自体を数個に絞ることも有効です。
ステップ3:自分なりの「選びの基準」を設定する
目的を明確にし、信頼できる情報源から候補を得たら、さらに絞り込むための具体的な「基準」を設定します。漠然と「良さそうだから」で選ぶのではなく、自分にとって譲れない、あるいは重視したいポイントを事前に決めておくと、判断が早くなります。
例えば、以下のような基準が考えられます。
- 内容の深さ・網羅性: 特定のテーマを深く知りたいのか、全体像をざっくり掴みたいのか。目次を見て判断する。
- 実践性: 理論だけでなく、具体的な方法やノウハウが欲しいか。
- 読みやすさ: 文章のスタイル、図解やイラストの有無、ページ数。短時間で読みたい場合はページ数の少ないものを選ぶ。
- 出版年: 最新の情報を求めているか。
- 著者: 過去に読んだ著者の本が良かったか、著者の専門性や経歴はどうか。
- 試し読み: 書店や電子書籍ストアで試し読みをして、冒頭部分や構成が自分に合うか確認する。
これらの基準をいくつか組み合わせることで、候補の本をより精緻に評価できます。すべての基準を満たす完璧な一冊はないかもしれませんが、優先順位をつけることで選びやすくなります。
ステップ4:候補を絞り込み、決める
ステップ1〜3を経て、あなたの目的や基準に合致する本の候補がいくつか残っているはずです。最後に、これらの候補の中から、最も今のあなたが「読みたい」と感じる一冊、または最も基準に合致する一冊を選びます。
ここで重要なのは、「これが最高の選択か」と悩みすぎないことです。読書は一度きりの機会ではなく、またその本が合わなかったとしても、別の本を選ぶことができます。一定の時間(例えば10分や20分)を決めて、その時間内で最善と思える一冊に決める、という訓練をすることも有効です。完璧を求めすぎず、まずは一歩踏み出すことを重視します。
選んだ本との向き合い方、そして次に活かすこと
こうして絞り込んで選んだ一冊は、あなた自身の意思決定によって選ばれた、現時点での最良の選択です。読み始めたら、最後まで読み切ることに固執する必要はありません。もし、読み進めるうちに「やはり今の自分には合わない」と感じたら、途中で読むのをやめても良いのです。それもまた、「今の自分にはこれが不要だった」という貴重な気づきになります。
重要なのは、その読書体験から何かを得ようとすること、そして次に繋げることです。面白かった点、役に立った点、あるいは合わなかった点を振り返ることで、次回の本選びの精度を高めることができます。
絞り込みのスキルを日々に活かす
本選びにおける「目的を明確にし、情報源を絞り、基準を設定して決める」というプロセスは、情報過多な現代における様々な場面で応用できる重要なスキルです。日々の情報収集、モノ選び、サービス選び、あるいは人間関係の距離感など、私たちの周りには決断を求められる場面が溢れています。
この「絞り込む力」を養うことで、情報に圧倒されることなく、本当に自分にとって価値のあるもの、必要なものに時間やエネルギーを集中させることができるようになります。読書を、単なる知識やエンタメの獲得だけでなく、意思決定能力を高める練習の場として捉えてみるのも良いかもしれません。
まずは、今あなたが読みたいと思っている本のテーマについて、今回のステップを試してみてはいかがでしょうか。きっと、情報疲れから解放され、読書がより豊かな時間になるはずです。